
法話2010年9月 安洞院短信9月号掲載
白木の位牌
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お盆・16日の夜、諸精霊をお送りし、翌朝、施食棚におまつりしていた新盆の精霊の白木のお位牌をご供養申し上げ、お焚き上げをいたします。白木のお位牌はお葬式のなごりを残し、生前のお姿を髣髴と思い起こさせます。
今年は71柱の新盆の御霊をお送りいたしました。
最高齢者は103歳のおじいちゃん、一番若かった方は間もなく1歳の男の子でした。それぞれの仏様たちのお通夜、お葬式の光景が脳裏に浮かんでまいります。
わが子に先立たれ、出棺の折、狂乱状態に陥ってしまった母親であるわが娘を、必死に支えようとしているおばあちゃんのお姿。
長年の介護の果てに奥様をなくされ、憔悴しきって喪主を務められ、やっとの思いで謝辞を述べられていたおじいちゃんのお姿。
まさに百人百様の別れではありますが、私は残された白木のお位牌から、故人となられた方の生涯を改めて偲びます。
どんな時代に、どのような親の下に生まれ、育ち、故人にとって人生の希望と目標は何であったのか。そして、社会に出られてどのような生き方をされ、なにを幸福と感じ、どのような苦労をされ、どのような家庭を築かれ、子供がいれば、子供たちにどのような心を相続させてきたのだろうか。
やがて老境に到り、なにを心の支えとし、自分の死にいかに向き合い、家族や友にどのような思いを遺されて、旅立っていかれたのだろうかと。
実は、こうした疑問はお通夜の弔問客やお葬式の弔辞などから紐解かれていきます。
家庭では仕事の話はほとんどしなかった父の通夜に、奥さんも子供たちも知らない数多くの弔問客が訪れ、家族が全く知らなかった、在りし日の故人の話をお聞きします。自分の父親が、人間として、世間の中でどのように生きてきたのか、その輪郭がおぼろげながらも定まってまいります。
白木のお位牌の御霊は49日間、家族や生前ご縁の深かった人たちへの思いを通わせ会いながら中陰の世界に止まり、翌日、黒塗りのお位牌に身を転じて、浄土の世界に旅立っていかれます。
今年も施食棚に安置されてきた白木のお位牌をお焚きあげし、お盆の行事はすべて終わりました。境内は静寂を取り戻し、やがて秋の気配を感じさせるようになってきます。
夏の終わりに、改めて新盆の諸精霊のご冥福をお祈り申し上げます。
住 職
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安洞院短信2010年9月号(第68号)PDF
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