
法話2010年5月 安洞院短信5月号掲載
フクロウの子育て
今年も、もちずり観音様の境内の大木に巣を作り、フクロウが子育てをしています。5月の初旬、無事に2羽の雛がかえり、早くも巣立ち、今必死になって飛ぶ練習をしています。
30年以上も前の話になりますが、ちょうど今頃の季節に、巣立ち間もない2羽のフクロウを境内で見つけ、猫などに襲われないかと心配して、安洞院に持ち帰り、育てたことがあります。
新鮮な肉でないと食べないことから、蛙や鶏肉などえさを確保するに大変苦労した思いがあります。しばらくすると鳥小屋の金網に何かで引っかかれたような跡が毎晩できるようになりました。不思議に思い月夜の晩、遠くから観察することにしました。
夜半に至り大きなフクロウが何度も飛来して、金網越しにえさを与えている姿が確認されました。
巣立ちの場所から1キロも離れたわが子を探し出し、毎晩親フクロウたちはえさを雛フクロウに与えていたのでした。野鳥に詳しい方の話によれば、フクロウは肉食であるために、広大なテリトリーが必要とされます。親子がいつまでも同じテリトリーにいたのではえさが不足して、お互いに生きていくことができません。雀や鴨は成鳥になるまで同じ場所に止まっていますが、フクロウは早い巣立ちを促して、雛鳥を見守り、えさを与え続け、どこまでも追いかけていって、成鳥する頃には親鳥のテリトリーの外に生息地を与えていきます。
たどたどしい子フクロウを森の中で見つけても決して捕獲してはいけません。その近くの木の上から親フクロウは外敵からわが子を見守り、えさを与え続けているのです。
そんなことも知らずに昔フクロウを育てたことを今反省していますが、当時飼育したフクロウの子孫がいま安洞院の境内に生息し、夜になると、ホーホーという懐かしい声を聞かせてくれます。
現代の日本、子供が育つ環境と親の資質が問われています。過干渉、価値観の押し付け、放棄そして遺棄、子供たちのおかれている環境は悪化の一途を辿っています。不即不離・当意即妙。フクロウがフクロウであり続けるための子育ては今でも寸分違わず繰り返されています。決して子供を私物化せずに、高いところから見守り、生きる術と環境を与えようとしているフクロウの子育てに、私たちも大いに学ぶべき点があると思うのです。
「親」という字は、木の上に立って子供を見ているという字から成り立っていることに改めて感心しました。
住 職
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安洞院短信2010年5月号(第64号)PDF
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