法話2009年10月

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法話2009年10月  安洞院短信10月号掲載

自然と人間

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お盆が過ぎて、もうお彼岸です。

お盆に合わせて、きれいに刈られた境内の草も今ではすっかり茂ってしまいました。
ある日の朝、蓮が咲く池のほとりの草を刈りました。この場所は墓地の土手などと違い、池の周辺であるために地面が多少湿っているためでしょうか、多くの虫やカエルが潜んでいます。

草刈機の轟音と振動に驚いてコオロギ、バッタ、キリギリス、鈴虫、アマガエル、羽虫などが一斉に逃げ惑います。飛ぶもの、走るもの、隠れるもの、人から見ればささやかな命かもれませんが、それぞれが必死の思いで、自分の命を守ろうとしています。草刈機を止めてふと考えます。人は何のために草を刈るのでしょうか。

ゴルフ場のように刈り込まれたグリーンは私たち人間には美しく見えます。その理由はよく分かりませんが、おそらくは太古の昔、人類がまだひ弱な時代だったころ、人手の加えられた自然は仲間のいる景色としてどれほどか癒しになったことでしょう。

現代人の持っている美的感覚の根底には、太古の昔に刷り込まれてきたこのような安堵感や安らぎの感性が潜んでいるのではないかと思うのです。地上で最も強い存在となってしまった今でも人類の美的感覚にそうような開発が際限なく進められていくことには問題があると思います。

私たちに何の被害も及ぼしたことのない昆虫やカエルたちのためにせめて虫の音が止む11月まではこの場所の草刈はやめることにしました。

「自然を守る」ということは、人類の欲得ばかりではなく、時としては人間の美的感覚や感性をも抑えていく必要があることに気づきます。そして、このような気づかいを仏教では「慈」の心といます。

墓参者から見れば草伸び放題の庭園は見苦しいかもしれませんが、この草むらこそが彼らにとっては、小宇宙であり、身を守るための家でもあり食物なのです。
今お寺の周辺の農家はイノシシとハクビシンによる農作物の大きな被害に困惑しています。
イノシシの天敵であった狐が絶滅したことでイノシシが増え続け、里山が荒れ果てて食物がなくなり、彼らは田畑に出て食を求めます。

一方かつて養殖の目的に飼われていたハクビシンは事業の廃止とともに一斉に野に放たれ、野生化し農作物に被害を与えています。

自然の恩恵によって育まれてきた人類。
虫や彼らは改めて自然とのかかわり方を私たちに再考させようとしているのかもしれません。

住職

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