
法話2009年8月 安洞院短信8月号掲載
お帰りなさい
僧職に入って42年。
今年もおかげさまで、お盆を迎えることができます。心から感謝いたします。
今までどれほど多くの方々をお見送りしてきたことでしょう。
百歳を超えるおじいさんから十歳に満たない女の子まで、様々な悲しい別れがありました。
お盆には数え切れない御霊がお帰りになります。帰ってくる家がなくなってしまった御霊はどこに帰ってくるのでしょうか、という素朴な質問もあるかもしれません。どうぞご安心下さい。みんなお寺に帰ってきます。
お寺では大きな精霊棚を開き、三界の萬霊(世の中の全ての精霊)をお迎えし、近隣のお寺さんにお手伝いいただき、施食の法要を奉修いたします。かけがえのないお盆、できるだけ多くの方々におまいりをいただき、心をひとつにしてご供養させていただきたいと、今準備を進めています。故人となられ、たとえ姿は見えなくても、生きているときと同じ思いでお迎えをし、好きだったお料理をお供えいたします。
兄弟親族が一堂に会し、故人をしのんで食卓を囲みます。そこにはすでに他界されているおじいちゃんもおばあちゃんも一緒です。生者と死者が同じ空間・時間に存在するお盆。 そのような命の営みは、西洋の人々には中々理解し難いことかもしれませんが、日本人はお盆以外でも常に先立った人達を意識しながら生きてきたのです。
そこには、先祖に対する深い感謝の心と子孫に対する切なる祈りが満ち溢れています。
「人間は決して孤独ではないんだ。多くの人たちに支えられ、見守られて生きているんだ」そうした思いがお盆によって培われ、やがて、子どもたちは優しい思いやりと強靭な精神力を持ち合わせた人間として成長していきます。
私たち大人は先祖と子孫の接点に立っています。それはちょうど大木を支えている幹のようなものです。根は地中にあって見えないけれども幹や葉を支えています。そして大木に必要な様々栄養を送り続けています。私たち先祖の思いも同じではないでしょうか。夏の日差しに輝く青葉は子どもたちです。次の世代を支えていく子どもたちの健やかな成長を確かなものとするためには、先祖に対する感謝の心を欠かすことはできません。大人は会社のことを忘れ、子供は学校のことを忘れ、8月13日の夕、心ひとつにして御霊をお迎えしましょう。
「お帰りなさい。」
住職
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安洞院短信2009年8月号(第55号)PDF
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